2026年3月19日 更新

かわいいひなちゃん

ペンネーム:まるちゃん

出会い

 

 数年前、駐車場で小さな黒いかたまりを見つけました。

それは、頭にたんぽぽのような産毛を残したツバメの雛でした。

辺りも暗くなり始めていたため放っておけず、自宅で保護することに。

「ひなちゃん」と名付けたその子は、つぶらな瞳を閉じ、消えてしまいそうなほど頼りなく、鼓動に合わせてゆらゆらと揺れながら眠っていました。

ツバメという鳥

 ツバメは、春に東南アジアから数千キロの旅を経て日本へやってくる渡り鳥です。

古来、害虫を食べる「益鳥」として大切にされてきました。

その成長スピードは驚異的で、孵化からわずか3週間ほどで巣立ちを迎えます。親鳥は1日に数百回もの給餌を行い、雛は高タンパクな昆虫を食べることで急速に骨格と筋肉を発達させます。

また、飛行能力も非常に高く、最高時速は200km近くに達することもあるそうです。

水浴びは寄生虫を落とし、羽の柔軟性を保つための欠かせない本能。秋には再び海を渡りますが、翌年、驚くべき精度でかつての営巣地へと戻ってくる個体も多いといいます。

日々の成長

保護したものの知識がなかった私たちは、必死に調べながら卵の黄身をすり潰して与えました。

次第にそれだけでは物足りなくなり、ホームセンターで生きたミルワームやコオロギを買ってくると、ひなちゃんは自ら興味を示して食べるようになりました。

ボウルにラップを張り、薄く水を張ってやると、一生懸命に羽を振るわせて水浴びをします。柔らかかった産毛が抜け落ちるにつれ、丸かった体つきは風を切るための鋭いシルエットへと変わっていきました。

 

瞳には野生の鋭さが宿り、気づけば私たちの指や肩を止まり木にして、部屋の中を自由に飛び回るようになっていました。

ほんの数日で一羽の雛が「野生の個体」へと変貌していく姿は、驚きの連続でした。

程なくして、ひなちゃんとは、あっけないお別れの日を迎えました。

幻のような数日間でしたが、ツバメが飛び交う季節になると今でも思い出します。

小さくとも健気に生きるツバメの姿を見かけると、毎年元気をもらいます。

ひなちゃんのおかげです。ありがとう。