その他のサービス

近年、日本人作家の東野圭吾や伊坂幸太郎の作品が英国ダガー賞※の翻訳部門で最終候補となったり、2025年には王谷晶の「ババヤガの夜」が同賞を受賞するなど、日本ミステリーが海外で高い評価を受けている事はご存じの方も多いと思います。
(※ダガー賞:英国推理作家協会が主宰する最優秀長編作品に与えられる文学賞。)
今回は(次回があるのか?)、そんな世界有数のミステリー大国日本の礎を築きながら、昨今ではなかば忘れられかけた戦後昭和期の名作4冊を皆さんにご紹介したいと思います。

一冊目は高木彬光作『刺青殺人事件』(昭和23年)です。
天才型名探偵 神津恭介(以前はよくTVのミステリー劇場等で目にしました)が登場した第一作目で、かの江戸川乱歩に認められ世に出た作者のデビュー作でもあります。
鍵のかかった浴室を現場に設定した密室殺人を軸に、心理的錯覚を用いたトリックや刺青という妖艶な世界観等が展開され、作品の魅力に引き込まれること請け合いです。

二冊目は仁木悦子作『猫は知っていた』(昭和32年)です。
江戸川乱歩賞が公募の形に変わったその一回目の受賞作品で、作者はわが国はじめてのミステリー女流作家と言われています。
一言で言えば、推理小説好きの兄妹コンビが病院で起きた難事件を解決するストーリーと言えますが、その明るく健康的な作風はそれまで色濃く残っていた猟奇趣味を一掃し、論理的な謎解きものとして読者を楽しませることに成功しており、日本ミステリーの近代化にも大きく貢献した作品と言えるでしょう。

三冊目は笹沢左保作『招かれざる客』(昭和35年)です。
昭和40年台中盤以降「木枯らし紋次郎」を主人公とする股旅小説で一世を風靡した作者のデビュー作にあたります。
中盤以降、犯人の見当はつくものの、鉄壁のアリバイあり、暗号あり、密室あり、と謎が盛りだくさんで、その一つ一つが解明され犯人が追い詰められていく醍醐味が大きな魅力となっています。

最後は結城昌治作『ゴメスの名はゴメス』(昭和37年)です。
ベトナム戦争前夜の不穏な空気が漂うサイゴン(現ホーチミン)に赴任した商社マンの主人公が、行方不明となった前任者の探索を行いながら、いつのまにか熾烈な謀略戦の渦中に巻き込まれていく、日本初の本格的な国際スパイ小説。
作者は翻訳ミステリー専門誌出身で日本のハードボイルド小説の先駆者とも言われており、
作風にも西欧的なスマートさとハードボイルド精神が十分感じられます。

今回紹介しました四冊は古い作品ながらも、全て文庫本で読むことができます。
文章や表現が若干古い部分もありますが、かえって当時の雰囲気や空気が感じられて新鮮に感じられるかも知れません。興味のある方は是非手にとっていただき、昭和ミステリーの世界を体感されてみては。







