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ふとしたことがキッカケで旧宿場町に興味を持ったのが今年のはじめの頃でした。以前から江戸時代後期の浮世絵師歌川広重や葛飾北斎などの描く版画(浮世絵、錦絵)の世界に興味がありました。その中でも広重の作品「東海道五十三次」は永谷園のお茶漬け海苔の付録として封入されていたこともあり、世間的にも有名ですし私自身も好きな作品です。
歌川広重(本名安藤重右衛門)は定火消同心という江戸幕府の役人でしたが、幼い頃から絵を描くことが好きで役人となってからも絵師の副業をこなし、暫く二足の草鞋を履いた後専業の浮世絵師に転職しました。当時人物画が中心だった浮世絵(錦絵)の世界に風景画のジャンルを確立し多くの作品を残しました。「東海道五十三次」は当時の旅行ブームとも相俟って大変な人気を博し、歌川広重の浮世絵師としての地位を不動のものとしました。
東海道五十三次とは江戸時代の主要な街道(五街道)のひとつである「東海道」に設けられた宿場町の総称です。慶長6年(1601年)、江戸幕府は東海道に駅制を定め、戦国期の宿駅を母体として、改めて駅(宿場)を設定したのです。江戸・日本橋を起点(終点)とし、京都・三条大橋までの全長約 492 kmを53の宿場で結びました。広重の作品55点(53の宿場と日本橋、京都三条大橋)には各宿場の風景や風俗が精緻に描かれており、旅情をそそる巧みな表現が施されています。多くの方が一度は目にしたことがあると思います。私はその作品のひとつひとつを目にし、解説を読むうちに各宿場町への興味が湧いてきました。
東海道の旧宿場の多くは現在のJR東海道線などの各駅から比較的アクセスしやすい場所に位置し、付近には名所・旧跡もあり観光地となっている場所も多くあります。旧宿場町を巡りながら観光地も訪ねるという設定は旅行好きの私の心を唆(そそ)るには十分なものでした。
ネット検索をすると各宿場町間を徒歩で行脚するという江戸時代さながらの強者(つわもの)もいらっしゃるようですが勿論私にはそういう芸当はできません。JR等の交通機関を乗り継ぎながら巡るという方法が関の山です。ただし、その方法でもこの鹿児島の地からはかなりハードルが高そうですがまあ気軽に楽しみながらやってみようと思い立ちました。
今春、「旧宿場町訪問」チャレンジ1回目を試すことにし、東京に向かいました。本来なら東海道の東の起点日本橋からスタートするべきですが、諸事情により東京から西に向かい、10番目の旧宿場町「箱根宿」で口火を切りました。箱根駅伝でも周知のとおり箱根の山越えは東海道の最大の難所であり、旅人たちを大いに苦しめたようです。今では交通インフラも整い、ご存じの通り温泉や見処も多く、宿場巡りプラス観光にはもってこいの場所です。景勝地を一巡りし、「入り鉄砲に出女」の言葉があるように江戸時代取締りが厳しかったと言われる箱根関所跡も訪れ、往時に思いを馳せました。

▼箱根関所の建物(復元)

▼箱根駅伝 記念碑

箱根を後にし、静岡県に入り「三島宿」(三島市)で三嶋大社に参拝するなど、静岡県内の旧宿場町を巡りました。今回訪問を計画する際判ったのが、53箇所の旧宿場町の内22箇所が静岡県内に所在しているということです。東西に広がる長大な静岡県の地形を見ると納得です。
静岡県内で訪れた旧宿場町のうち特に印象に残ったのが静岡市駿河区にある「丸子(まりこ)宿」(「鞠子宿」とも書く)でした。この地にある400年以上の歴史を持つとされる「丁子屋」という「とろろ汁」で有名なお店は広重の浮世絵や十返舎一九の「東海道中膝栗毛」にも登場し、そして松尾芭蕉の俳句にも詠まれています。茅葺屋根の趣あるお店の入口そして周辺の雰囲気は正に旧宿場町を彷彿とさせます。東海道53次の浮世絵など、店内の展示物を拝見させて頂き、名物とろろ汁に舌鼓を打ちました。
▼当時の面影を残す茅葺の建物

▼先人たちも食したであろう「名物 とろろ汁」

静岡県内で5箇所旧宿場町を巡り、さらに西進し隣県愛知県に入ります。愛知県では今回の旧宿場町訪問で最も見たかった豊橋市にある「二川宿」を訪れました。旧宿場で大名などVIP専用の宿舎である本陣跡が見事に復元されて、敷地内には資料館も併設され当時の街並みのジオラマなど作りこまれており、展示されている資料とともに参勤交代の様子などに理解を深めることができました。
▼駅前の観光案内看板 観光PRに力が入っている👌

▼旧本陣の建物

今回の宿場巡りは神奈川県から愛知県までとなり、神奈川県内1箇所、静岡県内5箇所そして愛知県内2箇所の合計8箇所の旧宿場町とその近辺を周遊することができました。旧宿場町は戦災やその後の開発の波の影響でその様相を大きく変えたところや昔の姿を色濃く残している場所もあります。多少の温度差はありますが各自治体の観光資源としてアピールされており、旧宿場町を大切に守っていこうという雰囲気を感じることができました。
旧街道は東海道の他にも中山道(69次)など四つの街道があり、それぞれに趣を残しています。コンプリートを目指すのではなく楽しみながらその地域の近隣を訪ねる機会を利用して旧跡に立ち寄りその情緒に浸りたいと思います。さらに、各旧宿場の観光案内所等で「御宿場印」なるものが企画され提供されているのも旧宿場町巡りのコレクターズアイテムとして今後の楽しみのひとつとなることと思います。








