2025年5月30日 更新

風景印の誘(いざな)い

ペンネーム:kogera

 皆さんは「風景印」をご存じでしょうか。
 風景印(風景入通信日付印)は郵便局に配備されている消印の一種で、局名と押印年月日欄と共に、局周辺の名所旧跡等がデザインされています。大きさは直径36mm以内で形は円形が基本ですが中には変形型もあります。昭和6年に誕生し、今年で94年の歴史を重ねています。誕生のきっかけは当時流行していた寺社の御朱印収集にあやかり、郵便事業を管轄していた逓信省(当時)が旅行者用の記念スタンプとしてそして収入源にもなると見込んでのことだったようです。
 私がこの風景印の存在を知ったのが17、8年前、ある雑誌の記事を目にしたときでした。郵便局を訪ね、その地域の名所や特産品などをモチーフとしてデザインされたいわゆる消印を押していただけるのです。押印してもらえる条件は官製はがき(通常はがき)又は葉書代金以上の切手を貼った台紙等を窓口に提示することです。その葉書や台紙等に消印として風景印を押してもらいます。
 試しにある郵便局でお願いしてみると、これがなかなか楽しい!わずか36mmの小さな世界に施されたデザインの妙にたちまち虜になってしまいました。郵便局は全国にあるし、旅行の都度その地域の風物などがデザインされた風景印が葉書の料金でいただける、しかも消印なので日付も入っています。これは、旅行の記念品としてまたとないものだと思います。

 

 風景印を集めているうちに、ただ単に普通の葉書や台紙への押印だけでは少し物足りなくなってきました。そこでやってみたのが切手や台紙のデザインと風景印のデザインをコラボさせることでした。風景印のモチーフに関連付けた切手や台紙を利用して押印してもらうのです。例えば、○○城を訪れる際には○○城の姿などが印刷された台紙に〇〇城に関連する切手を貼ったものを準備していく、そして近隣の郵便局で押印して頂くといったような感じです。風景印を押印してもらった「完成品」を眺めるのがまた実に興味深いのです。
 他にも自分でいろいろ工夫して楽しんでいる方もいらっしゃるようです。発展、進化系をいろいろと考えると心が浮き立ってきます。

 

風景印を押していただくときに心掛けていることが郵便局員の方に対する感謝の気持ちです。忙しい中押印セットを準備し、ブレないように、歪まないようにと細心の注意を払って押してくださいます。しかも売り上げはわずか葉書代金(現在は85円)なのです。それでもほとんどの方が笑顔で対応されています。押印された葉書や台紙を頂いたあと必ず「お忙しい中、ご面倒おかけしました。ありがとうございます。」と感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしています。
 そして、局員の方との会話の触れ合いも楽しみのひとつです。旅行中の何気ない言葉が心に残ることもあります。地元の名所を教えて頂いたり、「気を付けて旅行を続けてくださいね。」などと気遣いを頂くと心から嬉しくなってしまいます。

 すでにお話したように今では風景印押印は旅先での楽しみのひとつになっています。私にとって郵便局は切手や葉書を買ったり、郵便物を出したりするだけの場所ではないのです。初めての土地で郵便局を訪れ、押印していただき、名所や名物がわずか「36mmの世界」に巧みにデザインされた風景印を目にすると心の中で「いいね!」を連発してしまいます。
 風景印は押印の際、鳶色(赤茶色)のインクを使用することから、風景印収集の趣味を「鳶色の世界」と呼ぶ人もいます。
 皆様も「鳶色の世界」へどうぞ。